原子力平和利用国際協力には国としての協力・支援が重要

今までもそうだったが、原油価格の変動は今後も予測しにくく、石油製品を輸入に頼る国家、産業にとっても、エネルギー政策や企業活動に大きな影響を及ぼしている。せめて自国内だけでもエネルギーの安定供給を図るべく、原油価格のバーゲニングパワーとして種々のエネルギー資源の調達を図るが、石油の、燃料としてばかりでなく原材料としての利用範囲の広さや便利さに適うものはなく、代替石油資源の汎用範囲や大気汚染などの問題などもあり、なかなかその代替が広がらないのが現状である。

わが国では、石油はもとより、天然ガスもほとんどなく、戦後まもなくまで石炭に頼ってきた。しかし1950年代より、世界的に石油が燃料としてばかりでなく原材料としても大規模に転換・利用されるようになり、わが国でもその時期に、産業は石油を主体とする体型に移行してきた。

そのような世界的な産業構造の転換の中にあって先進工業国は、石油を燃料としてではなく原材料として後世に残すべく、原子力発電の積極的な利用を進めてきた。当然、原子力発電の推進がCO2の削減、すなわち地球温暖化防止対策となることは原子力関係者には既知の事実であったが、当時は一般的に地球温暖化についての認識は浅く、原子力関係者も、そのための積極的な「薦め」は行ってこなかったと思われる。しかし今や、世界的に、石油代替エネルギー源の一つとしてよりも、地球温暖化防止策としての原子力発電の意義の方が強いとさえ思われるようになった。

アテネ・オリンピックの参加202の国・地域のうち、30カ国の国・地域が432基、38,915万kWの原子力発電所を運転し、これらの国々の総発電電力量の17%程度を原子力発電で賄っている。現在、これらの30カ国の他に、原子力発電を新たに導入しようと考えている国・地域が50~60カ国・地域にのぼっているという予測がある。原子力発電先進国は、それらの新たに導入しようとしている国々に対し積極的な働きかけを行っており、わが国でも電力会社各社、原子炉メーカー各社などによる「国際原子力開発(株)」(2010年10月設立)を拠点に、その働きかけを本格化しようとしている。

原子力発電を導入しようとする国々・地域に関する国際協力には、幾つかの考慮、配慮すべき点があると思われる。

先ずは、導入しようとしている国々への配慮である。その国のエネルギー政策、エネルギー需給事情、産業の情勢、国民生活の状況、気候など、あらゆる状況を踏まえ、その国の政府と協議し、その国に見合った原子力発電導入計画やその規模を共に検討すべきであろう。そのようなことにより、国によっては原子力発電所の導入が、電力安定供給対策の大きな一歩となり、生活インフラ、産業インフラの向上に寄与することも大いに期待できる。また、電気ばかりでなく、その廃熱の利用についても、例えば地域暖房や農業への利用など、産業化、システム化する必要性が出てくるかもしれない。原子力発電の導入がその国の住民の生活環境の改善、産業の発展、雇用の促進にも寄与することになれば、なお素晴らしい。わが国の経済産業省や国土交通省なども今まで培ってきた経験の提供、積極的な協力をして頂きたいものだ。

二つ目は、供給国側の姿勢である。単に「原子炉」を輸出するだけでは、原子力発電先進国としての名が廃る。今までの失敗や、それを踏み台に培ってきた諸経験や情報の提供、安全規制の理想的なあり方、発電所に従事する所員の教育、訓練などにも積極的な協力が必要になろう。

さらにはその国に合った規模の炉を提供できるかどうかが問題である。現在、導入しようと考えている国々の多くが発展途上国であり、人口が少なく、産業も未成熟かもしれない。当然、そのような状況に合った小型炉を複数基建設すれば当分は充分ということも大いにあり得る。安価で、より安全で、運転しやすい小型炉の提供が出来るかどうかが鍵になるのではないか。100万kWの炉でなくては提供できないでは収まらない。また、将来にわたる燃料供給も考えると、30年間も燃料交換なしに運転し続けることができるような小型炉の提供が出来れば、相手の国の種々の負担も大幅に軽減される。

三つ目は国際的な約束の取り決めである。わが国は、原子力研究開発当初から、平和利用に限ってその実現と導入を図ってきた。1955年(昭和30年)に制定した「原子力基本法」第2条(基本方針)には、「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。」と規定されている。原子力は、多数の人間を殺傷するために開発するのではなく、人類の未来のために開発すべきであるという当初からの平和利用に限った開発、利用理念がわが国では受け継がれてきたし、今後も変わらず守られていく。その理念の基に「進んで国際協力に資する」ことが規定されている。

わが国が原子力技術の国際協力を進めるに当たっては、相手国の核不拡散の意志を明確にする観点から、核不拡散条約(NPT)の批准、IAEA保障措置協定の締結、そして平和利用に限ることを明記した2国間の原子力協力協定の締結が必要である。原子力国際協力には、国際的な平和利用の担保が不可欠である。わが国と直接関わるものは2国間協力協定であるが、その協力協定案の協議には、相手国との平和利用に関する具体的な交渉が必要となる。それらについての関係官庁の迅速な対応が求められると共に、合意後には国会での速やかな承認が求められる。

原子力発電に関する協力は、単に原子力発電設備、機器の輸出ではなく、相手国のエネルギー供給の安定、国民の生活環境の改善、産業活動の発展に繋がる事を考慮したわが国からの積極的な協力、支援が求められる。また、エネルギー分野に限らず、両国間の幅広い協力関係の推進も図られる必要があり、国会議員同士の一層の交流も望まれる。

(編集部)